梵字とは、光であり波である。
梵字工房『阿吽』
梵字書道家・田邊 武
梵字の由来
アジアのルーツである祈りの文字・悉曇文字(しったんもじ)は、古代インドのサンスクリット語「ブラフミー(梵天)によって作られた文字」という伝説に基づきます。西洋でいうラテン・ギリシャ語に相当する歴史・文化の根幹を担い、東洋では仏教による精神文化の根底把握に欠かせないものでありながら、インドの仏教衰退とともに7世紀頃に発祥したデーバナーガリー文字に吸収され、10世紀頃消滅しました。
日本で発展した梵字
一方、日本では仏教伝来と共に中国を経て伝播した悉曇文字が千年以上もの長い歴史を生き続けました。インドでの字体変化は遣唐使の廃止によって日本に伝わることなく、奇跡的に当時の梵字が日本のみ独自に現在まで継続されたのです。
幸せを祈る文字
梵字は真言と共に一字一字が仏の対象として独自の研究が発達したほか、ひらがなの発音配列基礎や様々な日本語の単語として今なお使われるほど浸透した面もあります。明治維新以降、西洋文化流入によりサンスクリット語研究と仏教関係者以外も梵字を学ぶ機会が生まれましたが、寺子屋廃止、廃仏毀釈などの影響もあり、梵字の継承者不足と衰退の危機にある中、世界平和のメッセージ・神々への賛歌と祈りとして蘇りました。